研究目的

 

   現代高度情報化技術を支えている電子システムは、電子機能部分には無機半導体材料が、コンデンサーには誘電体が、情報記憶材料には磁性体やガラス材料が、電力流路には超伝導体など、その役割に応じた種々の電子、光電子機能を有する材料によって構成されています。しかし従来利用されてきたこれらの材料においては、結晶全体が均一なものが好んで用いられてきました。加えて、材料の性質が時間とともに変化しない、静的な構造を舞台とする電子状態(基底状態)に基づく材料の性質を利用することも、基本となっていました。変化する材料はむしろ「劣化」という言葉で嫌われてすらきたのです。ところが、なるべく少数の材料で多くの機能を持たせようとする、例えば光や電場で誘電体と非誘電体、金属と絶縁体を入れ替えようとすると、このいわば「固くて静的な」性質が壁となります。さらに、現代の高度情報処理などに対応するために、この性質の入れ替え(相転移)をピコ(10-12:1兆分の1)~フェムト(10-15:1千兆分の1!)秒以下の超高速で行おうとすると、この「固くて静的な構造」の問題が一層顕著となります。この既成概念を乗り越えて、固体内の電子状態や磁気的(スピン)状態さらにはその空間的分布が、結晶の動的構造変化(非平衡状態)と強く結合した材料(非平衡強相関材料)を用いて、既存材料にはない新規な光電的機能の可能性を開拓しようとするのが私たちの研究グループの中心課題です。さらに物質開拓のために必要な、光励起後における電子と格子が一体化した量子的(ナノ)ドメイン形成過程を、フェムト秒の時間分解能を持って観測する技術の開発を行う点も重要な課題です。これら物質と観測手法両面の研究によって、臨界的非平衡電子構造物性科学ともよべる新分野を開拓するための新光技術を、理論家の協力のもと開拓しています。このために、物質開拓、技術開拓を目指したプロジェクトを、神奈川科学技術アカデミー(KAST)(1998-2003)、科学技術振興機構(JST)(ERATO:2003-2009、CREST:2009-2015)、日本学術振興会(特別推進:2018-)等様々な援助を頂きながら遂行しています。

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