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~強誘電体の性質を見る、操る~

強誘電体の性質を見る、操る

この世の中の結晶には、結晶自身の右と左(または上と下?)の区別ができるものがあります。このような「極性」を持つ構造をもった結晶を皆さんは思いつくことができるでしょうか?もちろん数少ない原子からなる「分子」なら左右の違いがある例をたくさん挙げることができると思います。しかし、分子や原子がアボガドロ数個集まってできる「結晶」の世界では、極性構造を持つものは実はあまり多くありません。自然界が結晶を産み出すとき、原子の配列は左右のどちらもひいきすることなく対称に配するのはとても自然なことのように思えます。

しかし、もしそのような極性構造を持つ結晶が見つかり、かつその方向性を人間の手(外部電界)で変えることができる場合、その結晶には「強誘電体」という特別の名前が与えられています。強誘電体はどのような特長があるのでしょうか。例えば、電界で結晶の方向性を変えるとその構造も変化するため、電気を結晶のサイズ変化という力学的な性質を変えることができます。またその反対に、結晶に圧力をかけることにより電気信号に変えることもできるでしょう。これらの性質はアクチュエータとか圧電素子などに応用されています。この他にも、その方向性という性質を利用したメモリやキャパシタ、非線形光学素子などへの応用もなされており、強誘電体は広く現代産業の重要な役割を担う基幹材料であるといえます。

私の研究室では、近年開発が進んでいる以下のような新型の強誘電体材料に注目し、その様々な性質をレーザ光を使って調べるだけでなく、新しい強誘電機能を光で制御する(取り出す)研究にチャレンジしています。

 

強誘電体の中には、結晶の持つ左右の違いが「異なる電子価数を持つイオンの配列」によりもたらされるタイプのものがあります。これは電子強誘電体と呼ばれており、近年その開発研究が盛んにおこなわれています。その1つの候補材料が、岡山大の池田らによって提唱されたLuFe2O4という組成式を持つ鉄複合酸化物結晶です(Ikeda et al., Nature 436, 1136 (2005))。近年我々は、これと類似の鉄複合酸化物(YbFe2O4)が第二次高調波発生(Second Harmonic Generation, SHG)を示すことを初めて発見しました。更に観測されたSHGのテンソル解析から、この系の結晶構造の対称性が単斜晶のCmに属することを示しました。この成果は、この鉄複合酸化物系が電子強誘電体であることの重要な証拠の一つであると考えられます。本研究は岡山大池田グループとの共同研究であり、Sci. Rep. 11, 4277 (2021)に掲載されました。

 

 

近年、水素結合を介して分子性結晶を組む有機共結晶群において、高い強誘電性を示すものが次々に見つかっています(例えばHoriuchi and Ishibashi, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 051009 (2020))。我々は、その中から室温で強誘電性を示すHdppz-Hca(ジ・ピリジニルピラジン-クロラニル酸)共結晶に注目し、超高速レーザパルス光源を用いてその強誘電性をコントロールすることに挑戦しています。この結晶に、電場振動位相が固定された中赤外フェムト秒パルス(最大強度が~30MHz/cm)を印加したところ、振動パルスが印加された時間の間だけ系の示すSHG強度が20%程度増強するという現象を発見しました。これは、振動電場の印加時間の間だけ(非線形ポテンシャル中にいる)プロトンが平衡位置を変化させ、その結果系の強誘電性が増大したために起きたと考えられ、フェムト秒スケールでの超高速強誘電性スイッチの新しい手法を示したものといえます。

本研究は東大物性研 板谷研究室、京大化研 廣理研究室、産総研 堀内研究室との共同研究であり、J. Phys. Soc. Jpn.誌にJournal of editors’ choice として紹介されました。

 

三価のコバルトイオンを含む化合物の中には、磁性と結晶構造が結合して起きる「スピンクロスオーバー(SC)転移https://www.amazon.co.jp/Spin-Crossover-Cobaltite-Outlook-Springer-Materials/dp/9811579288」と呼ばれる現象を示すものがあります。BiCoO3はそのような材料の一つですが、この試料はSC転移にともなって極性構造への変化を示すことが特長です(東工大東研究室の研究)。我々は、この系に高強度テラヘルツ光パルス(遠赤外線パルス)を照射することにより、このBiCoO3はの示すSHG強度が50%程度増強することを見出しました。これは、強誘電材料の示す非線形光学特性をアップする新手法として新聞、サイトなどにも取り上げられました。本研究は京大化研 廣理研究室、東工大フロンティア研 東研究室との共同研究であり、Phys. Rev. Appl. 7, 064016 (2017)に掲載されました。